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雛人形の口コミご用意

ビルの行動はすばやい。
起き上がって、全速力で走って、走って、メリーの乗った列車にドーバー駅で追いつくのだが、ビルが走っていくと列車が見えてくる、その臨場感が絵に漂い、ビルの必死さを強めているようだ。
ビルに気づいたメリーが列車から思い切り両手を伸ばしている場面はクライマックスだ。
メリーとビルが再び互いの信頼感を確認した瞬間だ。 ビルは駅のホームで敬礼をしている。
まるで、置き忘れられて大泣きしたことなんてなかったような、「お待ちしていました」とでもいいだしそうな姿で立っている。 忘れられたという危機に、ビルはすぐ行動を起こした。
めそめそ泣き暮らさなかった。 人形が捧げた忠心とでもいおうか。
ビルが衛兵のような兵隊であることが忠心、忠誠ということばまで思わせるのだろう。 その心がメリーという幼い少女に捧げられていることがいい。
これが絵本の古典になっている最大の要素かもしれない。 ビルの追いついたドーバー駅はメリーの行き先でもあるから、ぴたりとビルはメリーに間に合ったということだったわけだ。

なんてビルのかしこいこと。 最後はメリーから花束を贈られているビリーがトランクの上に立っている。
木馬が前足を上げてビルを称えているのが面白い。 木馬だから、足は固定されているのにと思ったが、ビルだって人形にもかかわらず全力で走ったし、お辞儀をしながら花束を受け取っているのだ。
そうだ、これは物語、それも小さな子どもたちのための物語なのだ。 その中に信頼やそれに応えること、感謝など人間が持つべき基本的な倫理が書かれているのだと思うと、この絵本の価値がまた新たに見えてくる。
絵本の中の絵はこの絵本の解説に訳者たちによって、ていねいに読み取られているように、各ページの絵の細部を見ていくと面白い。 ドーバー駅で立っているビルの後ろに並んでいるものは牛乳桶なのだろうか、そうだとしたら時代を感じさせると私は思ったし、メリーの頭巾のような帽子も古風だ。
おばさんが手紙を書いているその壁に丸い手回しのハンドルが描かれてあるが、いったいなんだろうとか、知りたいことがいくつもある。 絵本は細部を見るのが楽しい。
絵本は、作者が自分の子どものために描かれたものにあたたかさに満ちたいい本があるが、この本も娘のために描かれたものだ。 作者である父が娘に伝えたかったことがこの絵本に込められているのではないだろうか。
それは人形と少女の話だった。 そのことがうれしい。

E氏の挿絵は大好きだ。 最初に見たのは、小学生の頃読んだF氏の『ムギと王さま』だった。

なんともなつかしいようなペン画と色合いで、F氏のお話にぴったりだと思った。 それから、前にも書いた『チムとゆうかんな船長さん』。
これはE氏のはじめての子どもの絵本であり、代表作。 『まいごになったおにんぎょう』も彼の絵で、人形が出てくるとあって、私か好きな一冊だ。
この人形は手のひらに乗るくらい小さい。 そんな人形が、どうしてスーパーの冷凍庫で暮らすはめになってしまったのか、そこからお話ははじまる。
もともとの人形の持ち主の女の子は、「にんぎょうなんかすきではありませんでした」。 そういう子もいるだろう。
どの女の子もみんな人形好きとはかぎらない。 人形はその子のレーンコートのポケットの中に入れられて、長いこと忘れられていた。
ある日、女の子はお母さんとスーパーに行き、ポケットに人形があることに気がつく。 とりだしてみると、それはおにんぎょうでした。
「みっともないにんぎょう!」とおんなの子はいって、またいそいで、それをポケットにつっこみました。 しかし、人形はポケットには入らずに冷凍庫の中に落ちてしまったのだ!

なんてことだろう。 それにしても、「みっともないにんぎょう」だなんて、かわいそうないい方だ。
冷凍グリンピースの箱のあいだに落ちた人形(名前もつけられていない)もひどくショックを受けている。 おにんぎょうは、これからじぶんはどうなるのだろうとおもいながらしばらくじっとそこにねていました。
おにんぎょうは、「みっともない」といわれたことや、まいごになったことが、とてもかなしかったのです。 それでも、人形は寒さで体がこちこちになりはじめたので、あちこち歩き回る。
この人形は小さいので、冷凍グリンピースの箱がつんであると、大きなビルのように感じるのだった。 そのほかに冷凍イングン、ほうれん草、ブロッコリー、肉だんごや、魚のフライなどの箱の積まれた所を抜けると冷凍イチゴやアイスクリームの箱が重なっている場所に出た。
魚のフライの箱の所では箱に押しつぶされそうになったりと、人形にとっては大冒険。 でもいくら歩き回っても、冷凍庫の中からは出られない。
人形に気づく人はいないから。 人形はスーパーが閉まって暗くなれば寝て、冷凍庫で何日も何日も過ごす。
ある日、人形が箱を開けて、アイスクリームを食べていたとき、知らない女の子が人形を見つけた。 大人の目線では見えないものがあるのだと思う。
子どもだからこそ見つけてくれたのだ。 けれども、お店のものをいじるのはいけないといわれていた女の子は、かわいそうに見える人形を連れて帰りたかったけれども、思いとどまる。
その代わり、冷凍庫にいるのは寒いだろうと、お母さんに手伝ってもらって、フランネルの生地で帽子を作ったり、ビロードでオーバーを作ったりして、それを包んで冷凍庫の人形に届ける。 女の子が洋服を持って行ったとき、人形はグリンピースを上に投げてはそれをアイスクリームのさじで打つという遊びをしていた。
なんて楽しい遊びだろう。 E氏がその場面を絵に描いている。
人形は、さっそく女の子の作ってくれたオーバーを着て、帽子をかぶって、喜ぶ。 そして、女の子に向かって、感謝の気持ちで手を振ったのだった。

あたたかいふくをきると、おにんぎょうは、ずっときぶんがよくなり、じぶんのことをかんがえてくれるひとのことをおもって、しあわせなきもちになりました。 これは、一人暮らしの人形の絵本。
いったい、一人で暮らしている人形がいるのかと疑問を持つかもしれないが、いるのです。 このデイリーが彼女は自分の力で、暮らしを切り開いていった人形で、それも勇気ある行動に打って出たところが壮快だ。
この物語の人形デイリーは、はじめは人形の家に住んでいた。 この人形の家に暮らしているのは、みんな木の人形。
夫婦と二人の子供の家族は、二、三階の快適な部屋に住んでいる。 デイリーはメイドなので、屋根裏部屋が自分の部屋。
昼間は毎日、ずっといちばん下の階の台所で働いている。 朝五時に起きてかまどに火をおこし、夫婦と子どもたちの朝ごはんのかたづけをし、はいたり、ふいたり、みがいたり、こすったりするのが仕事。
休む暇なんかあったものではない。 メイドを指図するのは、料理番だ。
一日中デイリーに小言をいったり、怒鳴ったり、命令したりする。 ちなみに、絵を見ると、この料理番はなんとも意地悪そうな顔をしている。
人形の家に料理をする人やメイドまでいるとは、驚いた。 作者はイギリス人なので、ちょっと前の古風なイギリスの家を模したのだろうか。
人形の家にまで階層社会があらわれている。

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